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東京高等裁判所 昭和56年(ラ)621号 決定

抗告人 株式会社小柳不動産

右代表者代表取締役 小柳征一郎

主文

原決定を取り消す。

本件競落はこれを許さない。

理由

抗告人は、「原決定を取消す。」との裁判を求め、その不服理由は、別紙抗告の理由記載のとおりである。

民事執行法附則第二条の規定による廃止前の競売法第二九条第一項、同附則第三条の規定による改正前の民事訴訟法第六五八条によると、競売の公告中には「不動産の表示」を記載することが要件とされているが、右の要求は、競売物件に対する同一性認識の基準を与えるとともに一般公衆をして競売物件(土地)の地目、面積を知らしめて競売希望者に予じめその申立価額算定の標準を与えることにあるものと解されるところ、公簿面積と現況による実測面積とが著しく異る場合、公簿面積の記載を信じて競売がなされるときは競売関係者に不測の損害を与えることが明らかであるから、かかる事態の発生を防止するため、右公簿面積と実測面積の両者を公告する必要があり、単に公簿上の表示面積のみを記載した公告は違法であるといわなければならない。

一件記録及び抗告人提出の土地家屋調査士川田佐利作成の測量図によると、本件競売及び競売期日公告には物件として川崎市中原区丸子通一丁目四六〇番二宅地一五一・八六平方米及び同所四六〇番六雑種地現況宅地二・七一平方米が掲載され公簿上の面積のみが公告されたこと、右両土地及びこれに隣接する件外物件である同所四六〇番五宅地〇・五八平方米を含めた実測面積は一一九・〇九平方米であることが認められる。したがって、本件競売物件の実測面積は、一一八・五一平方米であって、公簿面積に比して三六・〇六平方米少く、その比は公簿面積の二三・三パーセント減少であることがいずれも計数上明らかである。

以上の事情のもとにおいては、実測面積が公簿面積より著しく少いものということができるから、公簿面の面積のみ掲載して現況による実測面積を掲載しなかった本件公告は違法であり本件競落は許されない。

よって抗告人の抗告は理由があるから原決定を取り消し、競落不許を宣言することとして、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 廣木重喜 裁判官 寺澤光子 原島克己)

〈以下省略〉

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